大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和47年(特わ)258号 判決

被告人

本籍

東京都千代田区神田一丁目二番地四二

住居

同都文京区小日向三丁目一一番四号

職業

会社役員

廣瀬ヨシ子

昭和四年三月二日生

被告事件

所得税法違反

出席検察官

宮本喜光

主文

1  被告人を懲役一年および罰金二、〇〇〇万円に処する。

2  右罰金を完納することができないときは、五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

3  この裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、自己の夫廣瀬盛衛が経営していた東京都千代田区東神田一丁目六番三号所在の千代田テレビ技術学校ほか三校における収入および資産の管理等経理事務全般を統括していたものであるが、右盛衛の業務に関し同人の所得税を免れようとくわだて、学費収入の一部を除外し、架空名義または無記名の定期預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四三年分の実際課税所得金額が七二、一三〇、〇〇〇円あつたのにかかわらず、昭和四四年三月一五日東京都千代田区神田錦町三丁目二一番地所在所轄税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が一一、一九三、〇〇〇円でこれに対する所得税額が四、〇二四、六〇〇円である旨の虚偽の右廣瀬盛衛名義の所得税確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額四四、一八七、三〇〇円と右申告税額との差額四〇、一六二、七〇〇円を免れ(別紙一、三)

第二、昭和四四年分の実際課税所得金額が二〇九、二三〇、〇〇〇円あつたのにかかわらず、昭和四五年三月一六日前記神田税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が四九、二八七、〇〇〇円でこれに対する所得税額が二八、〇〇四、五〇〇円である旨の虚偽の前記同様名義の所得税確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額一四七、二三六、一〇〇円と右申告税額との差額一一九、二三一、六〇〇円を免れ(別紙二、三)

たものである。

(証拠の標目)(かつこ内は立証事項。数字は別紙一、二の番号。)

一、被告人の当公判廷における供述(全般)

一、被告人に対する大蔵事務官の各質問てん末書および被告人の検察官に対する各供述調書(全般)

一、廣静盛衛に対する大蔵事務官の昭和四五年六月二二日付、同四六年二月一〇日付各質問てん末書(全般)

一、千代田学園教務部長永井善造作成の上申書(一の29、30)

一、株式会社東京相互銀行作成の書類送付ご案内と題する書面(一、二の26)

一、東京都千代田区長作成の証明書(別紙三の社会保険料控除分)

一、大蔵事務官作成の次の書面

1 学費収入調査書(一、二の1)

2 学費収入返金調査書(一、二の2)

3 雑収入調査書(一、二の3)

4 寄附金調査書(一、二の4)

5 給料調査書(一、二の5)

6 輸入什器備品調査書(一、二の9)

7 講師料調査書(一、二の6)

8 海外旅行費調査書(一、二の11)

9 銀行借入金および支払利息調査書(一、二の20)

10 支払利息調査書(一、二の20)

11 減価償却費等調査書(一、二の21 22)

12 たな卸調査書(一、二の23 24)

13 雑所得調査書(一の31、二の29)

14 経費調査書(一、二の7ないし22)

一、押収してある四三年分所得税確定申告書等一綴(昭和四七年押六三〇号の15)、四四年分所得税確定申告書等一綴(同号の16)

(法令の適用)

所得税法二三八条、二四四条一項(懲役刑および罰金刑併科)。刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(第二の罪の刑に加重)、四八条二項。同法一八条(主文2)。同法二五条一項(主文3)。

(量刑事情)

刑の量定にあたつては、本件犯行の動機、方法、脱漏所得(税)額、被告人が具体的に認識していた脱漏所得(税)額、申告割合、事前事後の納税状況等この種犯行の一般的情状を考慮したほか、本件においては、被告人が事業主である廣瀬盛衛の妻であるとはいえ事業主そのもの、すなわち所得の帰属者ではなくその使用人にすぎなかつたことを特に罰金刑の量定において考慮した。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 松本昭徳)

別紙一 修正損益計算書

廣瀬ヨシ子

自 昭和43年1月1日

至 昭和43年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙二 修正損益計算書

廣瀬ヨシ子

自 昭和44年1月1日

至 昭和44年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙三 税額計算書

廣瀬ヨシ子

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例